「アイドル」とは

普段何気なく口にする「アイドル」という言葉。
日本における「アイドル」は今やその形態は様々である。
世代を超え、時代を彩る「アイドル」はテレビや雑誌などのメディアでよく目に、耳にする機会が多い。

そんな「アイドル」とはどんな意味なのかご存知だろうか?
※これは、あくまで個人的な考え、自論になる。※

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意味、語源

「アイドル(idol)」は英語であって、“偶像”と日本語に訳する。
“偶像”は【神仏を模った像】つまり仏像やマリア像などである。

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そして「idol」の語源はラテン語『idola(イドラ)』で、幻影、偶像と訳される。
(idolaイドラについてはWikipedia参照)

ここで出てきた“偶像”は、宗教的な意味が強い。

偶像崇拝である。
仏教においては仏像、キリスト教(カトリック)はキリスト像やマリア像など、神仏を可視化し信仰する。

歴史の授業では、隠れキリシタンというものを習う。
隠れキリシタンは、仏教が強かった日本でキリスト教を信仰する者を異端とし処刑されるのを逃れるためにマリア像を模した観音像「マリア観音」で密かにキリスト教を信仰していた。

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現代で、よくアイドルオタクのことを「信者」だと蔑称、揶揄することがあるが、この語源的に見ると「偶像を崇める者」として「信者」は間違いではない。
むしろ蔑称、揶揄としては弱い。

アイドル史

では、「偶像」は【神仏を模った像】から【人間】になったのはいつからなのか。
それは、近代からである。

1940年代に「女学生のアイドル(bobby-soxer's idol)」と呼ばれて熱狂的な人気を生んだフランク・シナトラらがidolと呼ばれ始めた。
日本においては当初「アイドル」という言葉は、主に日本国外の芸能人を対象にした呼称として用いられた。
明日待子は「日本で最初のアイドル」(の一人)として挙げられる。1960年代には、産業としての映画の衰退、本格的なテレビ時代の到来、グループ・サウンズのブームが巻き起こる過程で、徐々に「スター」と並行して「アイドル」の呼称が用いられるようになった。
1970年代に至り、未成熟な可愛らしさ・身近な親しみやすさなどに愛着を示す日本的な美意識を取り入れた独自の「アイドル」像が創造された。1968年に設立されたCBSソニー(現・ソニー・ミュージックエンタテインメント)が、それまでレコード会社が楽曲制作を自社の専属作家に任せていたのを、無所属の作家に開放したことが切っ掛けで、「アイドル歌謡」が隆盛するようになった。

Wikipedia引用

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以降のアイドル歌謡は「昭和アイドル」と世代区分しよう。

松田聖子山口百恵など、基本的にピンでステージに立つアイドルが多い。
歌唱力が高く、現在でも尊敬するアイドルなどで名前が挙がる。
そんな中、秋元康が手がけた「おニャン子倶楽部」が人気を博す。
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1990年代になり時代は昭和から「平成」に元号が変わり、小室哲哉がプロデュースする安室奈美恵華原朋美が登場し、浜崎あゆみ宇多田ヒカルなど「歌姫」と呼ばれブームになる。 またシャ乱Qつんく♂がプロデュースする「モーニング娘。」がデビューして、グループによるアイドルが確立する。
2000年代に秋元康プロデュースの「AKB48」を結成。中田ヤスタカプロデュースのテクノポップユニット「Perfume」が登場する。

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それまであった昭和アイドルのような「個人」から「グループ」によるアイドルが主流になり、ステージに立つためのレッスンや過程を見せないアイドルから「成長過程をファンと共有する」アイドルへと変わっていった。

これを「平成アイドル」と区分。

2004年頃から「電車男」を皮切りに「アキバブーム」が起こる。
秋葉原には、メイド喫茶やライブカフェが次々出店していく。
ビルの地下に店を構え、ライブをする「ライブアイドル」「地下アイドル」が増えてきた。
2008年にデビューした「でんぱ組 (現でんぱ組.inc)」が所属する「ディアステージ」は最初は地下に店があった。

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そして、平成アイドルは2010年代になると爆発的に増え「アイドルを名乗るタレントの数が日本の芸能史上最大」となり【アイドル戦国時代】に突入する。

また、こうした大手アイドルだけではなく地方密着アイドル(ローカルアイドル:以下ロコドル)も誕生した。
青森県の「りんご娘」、新潟県の「Negicco」、宮城県の「Dorothy Little Happy」、愛媛県の「ひめキュンフルーツ缶」、福岡県の「LinQ」などである。

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2010年から女性アイドルの大規模フェス「TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)」が開催され、「アイドル横丁」や「アイドルカレッジ」などのアイドルフェスも次々開催される。

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そんな平成アイドルは、次元を超え2005年に登場した「THE IDOLM@STER」は、アイドルプロデュース体験ゲームとしてナムコ(バンダイナムコゲームス)によりアーケード用シミュレーションゲームが稼働を開始した。

2007年には、クリプトン・フューチャー・メディアからヤマハの開発した音声合成システム「VOCALOID」を用いた音声合成・デスクトップミュージック (DTM) 用のボーカル音源キャラクター・ボーカル・シリーズ01初音ミクが発売された。
当時、インターネットでの動画投稿サイト「ニコニコ動画」で初音ミクを使用した楽曲、キャラクター作品が人気になった。
2008年に樋口優氏が制作した、プリセットされたキャラクターの3Dモデルを操作しコンピュータアニメーションを作成する3DCGソフトウェア「MikuMikuDance(MMD)」により、初音ミク自身が歌って踊るアイドルとして数多くの作品が投稿された。

2010年、KADOKAWAランティスサンライズの3社共同企画「ラブライブ! School idol project」がスタート。
THE IDOLM@STERラブライブ!は、キャラクターのCVを務める声優がそのキャラクターとして実際にライブを行う。

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その後もこうした「アイドルをテーマにした作品」が次々登場する。
キャラクターのCVを務める声優がそのキャラクターとして実際にライブを行うことは一貫するものの、作品によって特徴や形態が異なる。
BanG Dream!」はガールズバンドで声優も実際にバンドとして楽器演奏をする。
少女☆歌劇 レヴュースタァライト」はミュージカル舞台劇で、殺陣もある。
ラピスリライツ 〜この世界のアイドルは魔法が使える〜」は3DCGのホログラフィックを使った演出が特徴的である。

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また、声優によるアイドル化も進み「アイドル声優」と呼ばれることもある。

2016年にyoutubeで3DCGによるキャラクターアニメーションのバーチャルYouTuber (Vtuber)「キズナアイ」が登場した。
バーチャルYouTuber」の草分け的存在として知られている。
当時はまだ人数も少なかったバーチャルYouTuber (Vtuber)は現在も増え続けている。
2018年には「にじさんじ」「ホロライブ」などのVtuberメインの企業も増えた。

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また自治体や企業独自でバーチャルYouTuber (Vtuber)を始めるところもある。
燦鳥ノム」(サントリー公式)や「ハローキティ」もVtuberとなる。

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2020年、前年に元号が平成から「令和」に変わり、アイドル戦国時代を超えたもはや「ガラパゴス」と化したアイドル業界は「新型コロナウイルス」の影響により次々とライブやイベントが中止または延期になり、窮地に立たされている。
今後、この窮地を脱し新しく「令和アイドル」が誕生するのか期待したい。

日本のアイドル文化

さて、ここまでざっと「アイドル史」を連ねてきたが、なぜ日本でここまで「アイドル」という文化があるのか。
海外で、日本のような「人間によるアイドル」というのをあまり聞いたことがない。
むしろ日本のアイドルを好きになる海外勢を多く耳にする。

それは「宗教」によるところがあると考えた。

まず「宗教」においては、世界の中で「キリスト教」が多い。
キリスト教は「偶像」を禁忌とするプロテスタント、偶像があるカトリック(厳密にはキリスト教全体として偶像はダメなのだが……)がある。
つまり、そもそも「偶像(アイドル)文化」がない国がある。

日本は、今でこそ仏教やキリスト教神道など文化がごちゃ混ぜである。
歴史で習うのは「昔仏教が伝来して、後からキリスト教も伝来した」という感じだ。
そもそも日本は万物に神が宿っているという「多神文化」だった。
(キリスト教以前の世界も「多神文化」(エジプト神話やギリシャ神話など))

日本神話で「天岩戸隠れ」というのがある。
須佐之男命に手を焼いた天照大神が、天岩戸に引きこもってしまう。天照大神が出てこないと困ると考えた神々は、天照大神を引き出すために作戦を練る。
作戦は、天岩戸の前で宴をして、舞台には天鈿女神が舞を踊る。
すると、その楽しげな音を聞きつけ、ついには天照大神が天岩戸から出てくる。
というお話。

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このお話は、天鈿女神が舞台で舞を踊って、その周りで神々が宴をする。
まさにステージで歌って踊る「アイドル」ではないだろうか。

また、日本は何か厄災が起こると祈祷や「人柱」による生贄で鎮めようとする。
その際「巫女」が舞を踊るなどすることもある。
人柱もほとんど「年端もいかない生娘」が生贄になることがある。

これは「アイドルの処女性」への意識がこういう「巫女」や「人柱」から起因しているのではないかと考えている。

つまり、日本は昔から遺伝子レベルで「アイドル」への意識があるのだと思う。

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最後に

現代日本において「アイドル」は世界に発信できる文化となったのはこういった複雑に絡んだ様々な要因で成り立っている。
(細かい厳密的なことはそれぞれで専門的に学習する必要がある)

現在も「アイドル」になりたいと願う女の子は多い。
ガラパゴス」と化した「アイドル業界」は今や『選択肢』が多く、アイドルになりやすい。

民俗学者柳田國男は「元来女性は、男性にはない『感動しやすい習性』『精緻なる感受性』をもつがゆえに、巫女的な妹の力(いものちから)を得て、生きる力、幸福への道を伝えることができる」と評論したという。

「 アイドル」になった女の子はどんな思いで、願いで「アイドル」をやっているのか。

キラキラ輝く「アイドル」を夢見る少女は果たして自分が思う「理想のアイドル」になれるのだろうか?